田沢湖線の雫石駅が在来線のSuicaエリアに入るらしい

本日,盛岡・青森・秋田周辺の在来線が,2023年春以降にSuica利用可能エリアに含まれるようになると発表されました. 北東北3県では,2020年春に事前購入型の「新幹線eチケット」,2021年春にSF利用型の「タッチでgo!新幹線」が導入され,新幹線に限ってSuicaが利用できるようになりました. 現在も在来線ではSuicaが利用できない状況ですが,数年後の改修によって利用できるようになります. 目的の駅が新幹線停車駅でない場合でもSuicaだけで移動できる場合が多くなりますし,何より地元利用者の利便性が相当向上しますので,大変喜ばしいことかと思います.

さて,今回の改修でSuicaエリアに含まれる駅の中に,一駅だけ気になる駅があります. 田沢湖線雫石駅です.この駅は,秋田新幹線の「こまち」号が停車する駅でもあります.

以前投稿した記事で,「タッチでgo!新幹線」のミニ新幹線駅への導入が,普通列車向けSuicaサービス拡大の障壁になるのではというようなことを述べました. hiiro7.hatenablog.com ミニ新幹線の停車駅には普通列車用と新幹線列車用とで改札が分離されていない駅が多く,そのような駅で普通列車向けSuicaサービスと新幹線列車向けSuicaサービス(タッチでgo!新幹線)を共存させ,正しく運賃や料金を収受するのは難しそうです.

雫石駅は,まさに改札が分離されていない駅です. この駅が在来線のSuicaエリアに含まれるようになるということは上述の問題が発生するのでは,と思いきや,実はまだ大丈夫そうです.

この問題は,同一エリア内に雫石駅と同様の駅がもう一駅以上存在するようになり初めて発生すると考えます. 仮に角館駅田沢湖駅(両駅とも改札が分離されていない)の間の普通列車Suicaが利用できる場合,両駅の改札機では新幹線を利用したのか普通列車を利用したのか分からなくなってしまいます. 一方盛岡駅(改札が分離されている)と雫石駅の間の移動では,盛岡駅で通過した改札により,利用した列車が判別できます. 角館と田沢湖の2駅のような組み合わせは,今回Suicaが導入されるエリアには存在しませんので,その問題は起きません. とはいっても角館駅田沢湖駅での普通列車利用者は不便を強いられるという別の問題もありますが,もともと普通列車の本数が新幹線列車に比べて相当少ないですしこれも大きな問題ではないのでしょう*1

今回の改修対象に,利用が多そうな山形周辺の路線は含まれません.これは山形周辺には「つばさ」が停車しながらも,雫石・角館・田沢湖のように改札が分離されていない駅がたくさんあり,まさに「障壁」になっていることが原因なのではと予想します.まあ,原因はこれと全然関係ないところにあるのかも知れませんが…

ところで今回Suicaが利用可能になるエリアでは,クラウド技術を利用した「新たな改札システム」が導入されると発表されています. JR東日本の現行の新幹線改札機では,「新幹線eチケット」対応のためにクラウド技術が利用されているかと思います(参考). となると,新たな在来線改札機は新幹線改札機と似た仕組みで造られるのでしょうか.雫石駅の改札機は幹在共用で造られるのでしょうか. 数年後の答え合わせが楽しみです.もちろん,今回改修対象とならなかった駅も含めて,さらなるサービス拡大も楽しみです.

*1:大曲駅は列車本数が比較的多いにもかかわらず,2駅同様に普通列車向けSuica導入の対象外です.しかし改札は分離されているので,いざとなれば秋田Suicaエリアへの編入は容易でしょう.

「タッチでGo!新幹線」エリア拡大を受けて、ミニ新幹線におけるSuicaの懸念点

来年2021年春から,JR東日本のすべての新幹線路線*1が,SuicaなどのICカードのタッチで利用できるようになることが発表されました. 対象となる新幹線の路線には,ミニ新幹線である山形新幹線秋田新幹線も含まれます. 便利になりそうなのですが,ミニ新幹線区間について2つほど懸念点があります.

山形・秋田新幹線は,ほかのフル規格新幹線と比べて,少ない工事により新幹線車両を走行可能にした路線で,「ミニ新幹線」と呼ばれています. 奥羽本線田沢湖線普通列車が走行する線路と同じところを,新幹線車両が走行します.

ミニ新幹線の特徴は駅にも現れており,同じホームに普通列車と新幹線の両方が発着する駅が多いです. 現に,山形,大曲,秋田駅*2以外の駅では,普通列車と新幹線のホームが別れていないようです. このような駅では,共通の改札口で普通列車の旅客と新幹線の旅客の両方の改札を行います.

1. ミニ新幹線区間普通列車を使用する旅客からの特急料金誤収受の可能性

来年春からの「タッチでGo!新幹線」エリア拡大に先行して,すでにJR東日本のすべての新幹線駅の改札口にはICカード対応の改札機が設置されています. 新幹線改札のICカード読み取り部は,今年3月までは「モバイルSuica特急券」の利用者様として,また3月からは「新幹線eチケット」用として使用されています.首都圏の新幹線駅では「タッチでGo!新幹線」用としても使用されており,来年3月からは他エリアでも同じ役割を兼ねると思われます.

さて,この改札機はミニ新幹線区間の駅にも設置されています.この改札機について特筆すべきこととして, (a) 紙の切符の投入口がない(IC専用)ことと, (b) 普通列車の利用客も利用する改札口に設置されていること が挙げられます.写真の田沢湖駅の改札口はこのタイプです.

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田沢湖駅の改札口.普通列車の旅客と新幹線(こまち号)の旅客の両方がここで改札を受ける.この区間普通列車の本数がこまち号に比べて極端に少ないのもあって,発車標には普通列車の発車案内がひとつもない

このような駅の改札口では,次のような運用がなされています.

  • 新幹線にICカードで乗車する旅客は,改札機にタッチする.
  • 新幹線に紙の切符で乗車する旅客は,駅員に改札を受ける.
  • 普通列車に(紙の切符で)乗車する旅客も,駅員に改札を受ける.

さて,ミニ新幹線と同じ線路,奥羽本線田沢湖線普通列車に乗車する旅客は,ICカードのタッチで利用することはできません. これは,奥羽本線*3田沢湖線Suicaの利用可能エリアに含まれていないためです.

しかし,Suicaの利用可能エリア外であるにも関わらず,そのことを知らずにICカードで乗車しようとしてしまう人があとを経ちません. これまで,誤ってICカードを利用しようとした旅客は,乗車駅や下車駅の改札口などで足止めを食らうことになっていました. このことは十分問題なのですが,それでもこの程度の問題でした.

さて本題ですが,「タッチでGo!新幹線」エリア拡大により,奥羽本線田沢湖線で誤ってICカードを利用しようとしてしまった旅客に対し,更なる問題が発生することを懸念しています. それは,ミニ新幹線の停車駅相互間を普通列車で移動する旅客が,乗車駅と降車駅で誤ってICカードをタッチしてしまった場合,運賃だけでなく特急料金までもが,ICカードのチャージ残額から差し引かれてしまうのではないか,というものです.

例えば,奥羽本線米沢駅から赤湯駅まで普通列車で移動する旅客のことを考えます. 米沢駅赤湯駅はどちらも山形新幹線「つばさ」号が停車する駅で,新幹線用の改札口と普通列車用の改札口が共通になっています. 奥羽本線Suicaエリア外であることを知らない旅客は,両駅の改札機にタッチしてしまいます. 両改札機は新幹線用のものですから,その旅客は新幹線に乗車したものとして扱われます. そのため,本来の運賃は 330円 ですが,旅客のICカードからは特急料金 760円 を合わせた 1,090円 までもが引き去られてしまうことになります. 改札機からは足止めされることもありませんから,引き去り金額を気にしなければ,このことに気づかずそのまま駅を去っていってしまいそうです.

この問題に対し,どのような対策がとられるのか気になるところです. ミニ新幹線の構造上,全ての駅で(山形,大曲,秋田駅のように)改札内を分離することは現実的ではなさそうです. 最も現実的そうなのは,改札口に「新幹線に乗車しない方はICカードをタッチしないでください」という旨の案内を掲示することでしょうか. これは確実な対策ではないでしょう.

ここまで書きましたが,この問題は意外と限定的な範囲に収まりそうです. 「タッチでGo!新幹線」を利用するためには,つまり新幹線にICカードのタッチのみで乗車するためには,必ず一度,券売機での利用登録が必要となるためです. 利用登録をしなければ,誤って上述のような区間ICカードをタッチしてしまっても,改札機に足止めされて誤りに気づくでしょう.

2. ミニ新幹線区間普通列車に対するSuica利用可能エリア拡大への障壁

JR東日本は,将来,自社全線をチケットレスで乗車できるようにすることを目指していると聞いたことがあります. この「全線」には奥羽本線田沢湖線も含むのでしょう.

奥羽本線田沢湖線普通列車ICカードのタッチで乗車できるようにする場合,ミニ新幹線の駅の構造が大きな障壁になりそうです. ひとつの改札口の自動改札機で,普通列車の旅客と新幹線の旅客をどのように判別すれば良いのでしょうか?

ひとつ考えられるのは,先日開業した東武鉄道東上本線「みなみ寄居駅」の例にならって,乗車する列車に応じた改札機を並べて設置するというものです. 「新幹線を利用する方は左の改札機に,普通列車を利用する方は右の改札機にタッチしてください」の旨の案内によって旅客に周知させることができれば,とりあえずは実現できそうです. しかし,タッチする改札を誤った場合,運賃・料金の差が東上本線の比にならないくらい発生します. 新幹線に乗車したのに,意図的に普通列車用の改札機にタッチされる不正も考えられます. 不正の対策としては,新幹線列車内での検札を強化するとか,首都圏のSuicaグリーン券システムのようなものを新幹線車内に導入する(新幹線改札を通過した旅客は,車内の座席上のICカード読み取り部にタッチして,ランプを赤から緑に変えるようにする など)とかいったところでしょうか.

いずれにせよ,奥羽本線田沢湖線でのSuica導入についてはまだなんの発表もありませんから,以上の議論は完全な妄想です.

最後に

在来線と新幹線を合わせると,列車の乗車にSuicaのタッチが利用できるエリアは相当広い範囲になりました. 今回紹介した新幹線のIC乗車エリアのほかにも,在来線ではもうSuica首都圏エリアと仙台エリアがくっつきそうです. 紙の乗車券の途中下車の扱いがどうなるのかなど,在来線のほうにも気になるところがたくさんあります. 今後の動向に目が離せません.

*1:大宮,高崎,福島駅でのいわゆる「V字乗継」(直通しない方面同士の乗り継ぎ)と,盛岡駅をまたがった利用は対象外

*2:これに加えて,福島,盛岡駅

*3:山形駅から福島,山寺,鳴子温泉駅以遠の間を利用する場合を除く.この場合,福島,鳴子温泉駅までの区間つばさ号には乗車できません

サンライズソロ輪行で体調こわれる

※タイトルはほんの出来心です。

3/24 18:30頃。尾道駅。 8日間に及ぶサイクリングの旅を終え,帰路につくことにしました。

この日はしまなみ海道今治尾道と走りました。

14:36。生口橋

最近リニューアルされたらしい尾道駅。半年前にも来ていたのですが様相が異なっていました

18:42。輪行袋を抱えて山陽本線の岡山行きに乗り込みます。実はこの時点でミスを犯していますが,またすぐあとで。


新倉敷駅で新幹線に乗り換えます。わざわざ新幹線に乗り換えずにさっきの電車に乗り続けた方が早く着くのですが,諸事情で*1新倉敷→岡山の新幹線の切符を持っていたのでどうせならと乗っておきます。

乗り換え40分待ち。

新倉敷駅を猛スピードで通過する新幹線。


20:27。岡山駅。ここから寝台特急サンライズ出雲に乗り換えます。といってもサンライズが来るまで残り2時間あります。

サンライズで車内販売は無いということで駅の周りで何かを食べようにも,荷物(自転車)が重すぎて全然動けません。体も重いなんだか寒い。 駅の外に出てみるなどしたのですが,結局改札近くのセブンで食料を調達することになりました。食料を調達したあとは改札内の椅子でずっと座っていましたが,とにかく寒い

待ち時間がとにかく長く感じました。思えば尾道駅輪行作業を始めるまえに夕食をとっておくべきでした。

あと23分

発車時刻が近くなってきたところでホームに降ります。接近メロディーの線路は続くよどこまでもが耳に刺さる。そしてホームは寒い


22:30。やってきましたサンライズ。初めて乗ります

今日の宿です

通路。輪行袋を持ちながらだとすれ違いは不可能です

さて今回利用する設備はソロ個室。ネットではシングル個室以上であれば余裕で輪行できるという意見が散見されました。ソロ個室で輪行したレポートもあるもののわずか。果たしてうまく輪行できるのか…?

ソロ個室はこんな部屋

結論から書きますと,輪行袋に入れた自転車は個室にきちんと入ります。そして自分の居場所も残ります。ただ寝るためのスペースはほとんど失われます。

どれくらい失われるかというと,僕の場合は足を横に並べて伸ばせなくなるくらいです(縦に並べることはできた)。

写真がない…


22:34。列車は岡山駅を発車します。とりあえず車掌さんの検札を部屋で待つことにしました。個室なので室内灯を切ったり点けたりできるのですが,室内灯を全部切ってブラインド(?)を開けると夜行列車感が出てマジでエモいなと思いましたでも写真がない

先ほどセブンで食料を調達したにも関わらずなぜだか食欲が湧きません。車掌さんもなかなかいらっしゃらないのでウトウトしてきて,三ノ宮か大阪あたりで眠りについてしまいました。


2:00。寝る姿勢のきつさからか目覚めました。大体関ヶ原あたりだったのでしょうか…?iPhoneのコンパスアプリではそう表示されました。(通信制限で地図が表示できなかった)

結局車掌さんが来た記憶も形跡もありません。窓際に置いてあった切符にいつの間にか検札印が入っていないか(寝ている間にサンタさんが枕元にプレゼントを置くみたいに←???)と見てみてましたが流石にそんなことはありませんでした。寝ていてノックにすら気づかなかったのか,それとも本当に来なかったのか…?

それよりですね,このときから頭痛と筋肉痛を感じるようになったのです。体調の悪化を感じたのもこのときからです。 体勢も体調もきついなあと思いつつ,とりあえず寝ることにしました。


このあと何度か目覚めては寝るを繰り返すのですが,結局しっかり起きたのは熱海と横浜のあいだです。このときになるとあたりはすっかり明るくなっていました。 夜間は止まっていた車内放送もかかり始めます。

依然として体調は悪いまま。東京が近づいているなあ,動きたくないなあと気だるさを感じていました とりあえず頑張って身支度をしました。


3/25 7:08。東京駅。

サンライズを降りたあとは(上野東京ラインの)常磐線に乗り換えます。25分待ち… (つくばまでだったらTX使った方が楽なのですが,遠くからJRで来ている場合は常磐線で荒川沖もしくは土浦まで乗って自走した方が安くなることがあります。僕は数百円が惜しかったので…)

7:32発の常磐線快速勝田行きに乗ります

東京駅に到着したサンライズ瀬戸・出雲には車両を撮影する人たちが集まっていました。僕にはそんな元気はなく,寒さに震えながらホームに突っ立っていました


8:36。荒川沖駅

ここで下車します。15両編成の最後尾車両ですと駅の出口まで滅茶苦茶遠いです。

さてさて,輪行を解くとそれからはつくばまで10km程度の自走になります。 この自走がラスボスという感じでした。段差を越えるたびに頭がズキズキするために15km/hくらいでしか走れません。つくばまで無限に道が続くように感じました。


40-50分程度かけてやっとの思いで帰宅しました。ということでお待ちかねの検温タイムです

39.5℃

デデドン!(絶望)

思えば岡山駅体が重かったのもなんだか寒かったのもとにかく寒かったのも音が耳に刺さったのもホームが寒かったのも,車内でなぜだか食欲が湧かなかったのも不穏の前兆だったのでしょう。あとやっぱり尾道で出発前に食事をとっておくべきだったんですよね。食べておいて体調悪化を回避できたかどうかは置いておいてとりあえず何か食べておくべきでした。もったいないなあ。反省。また行きます。(!)

*1:単に乗り継ぎ割引を効かせるためですが

上高地へサイクリング

これはCycling Advent Calendar 2018の記事です。


だいぶ前のことですが,今年の8月4日に長野県松本市へチャリを持って行きました。 そこから穂高連峰の麓にある上高地を目指してチャリを漕ぎました。

何故その日に弾丸で行こうとしたのかはよく分かりませんが,おそらく長いこと関東に引きこもっていたために脱出したい欲が高まっていたのでしょうか

概略

ルートはこんな感じです。

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自転車で京都から名古屋へ移動したときのメモ

僕は大学でサイクリング部に所属していまして,2月28日までの5日間,関西を4人ほどで旅行していました.この「合宿」のゴールは京都となっており,最終日にそこに到着して合宿は終了となります.合宿の終了と同時に解散となり,その後の行動は大学のある関東に帰るなり,帰省するなり,京都を観光するなり各自の判断に委ねられるわけです.

さて僕は,合宿終了翌日の3月1日に,次のようにしようと考えました.

  • 名古屋から東京まで新幹線で帰る.
  • 京都から名古屋までは,自転車で行ける限り移動してみる.新幹線の時間が近づいてきたところで輪行する.
  • ただし最低でも亀山へは到達する.
  • 四日市まで行ければ良いかな.

新幹線については20時26分に名古屋を出発する「ひかり」を取っておいたので,これに間に合うようにいろいろと調整することになります.亀山を最低条件とした理由としては,そこまで行かないと近い距離に鉄道がないことが挙げられます.

肝心のルートについては,京都から名古屋まで国道1号東海道)をずっと進んでいくものを考えました.滋賀と三重の県境に「鈴鹿峠」があり,これが最大の難所となるようでした.

本記事では,この日の実際の動きについてメモしておこうと思います.

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